山梨県は、妊娠のタイミングと仕事のキャリアとの両立に悩む女性を支援するため、健康な女性が卵子の凍結保存を行う費用を助成する方針で最終調整を進めています。これは、出生率の低下に歯止めをかけ、妊娠を望む女性が健康管理を行う「プレコンセプションケア」を普及させる一環としています。
対象は県内に住む女性で、条件として「プレコンセプションケア」や卵子取り出しのリスクを学ぶ機会があり、対象年齢や助成の上限などについては調整中です。提案される予算案は、2月の県議会に計上される予定です。
卵子の凍結に関しては、がん治療で卵巣機能が低下する恐れがあるため、若い世代のがん患者などにも助成が行われています。しかし、山梨県の措置は、東京都に続く2例目で、健康な女性に対する直接的な支援策として注目されています。
東京都では既に、健康な女性の卵子凍結に助成が行われており、これが患者の年齢層の若返りにつながっています。京野アートクリニック高輪の京野廣一理事長は、「都の助成が患者の負担を減らし、若い世代に卵子凍結の認識が広まった」と述べています。
一方で、実施に際しては働く女性が受診しやすい環境の整備が重要であり、「仕事に影響を与えないような診療希望が多い」と指摘されています。
国立成育医療研究センターの不妊診療科齊藤隆和診療部長は、自治体が卵子凍結を支援する際には患者に対してメリットとデメリットを十分に説明し、最終的な治療の選択を自らで行う情報提供が必要だと指摘しています。そして、「卵子凍結を助成することはやむを得ないが、社会全体で卵子凍結を選ばない方が望ましい」と述べ、女性の社会進出と自然な妊娠・出産の両立を目指す社会づくりが求められるとの考えを示しました。
齊藤医師は、「女性の体の仕組みや妊娠の確率などが理解されることで、子どもを持ちながら仕事が続けられる仕組みが整備されることを期待したい」と述べています。